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Junk Mind D.N.A.

ことばがかいてあります。

輪廻/輪舞

というタイトルで小説を書いています。
短編です。

ずっと好きだったフレーズです。りんね・ろんど。
思い入れのある言葉なので、爽やかな話にしたいと思っていました。

ええ、無理でした。


 ひとり、女性がビルの柵を超えた。
 躊躇うことなく足を踏み出し、堕ちる。
 景色は逆さまになり、回り始める。

 初めて男に抱かれた日のことを思い出す。
 相手は初恋の先輩だった。
「誰とでも寝るんだろう?」
 そう罵倒され、組み敷かれた。
 逆らうことすら、面倒だった。

 同級生に囲まれ、暴力を振るわれたこともあった。
「生意気なんだよ!」と言われ、殴られた。
 傷が癒えるまで部屋に篭っていると、両親に愛想を尽かされた。

 夜の街に逃げ込む。
 人工の灯と、骨を引き剥がすようなノイズ。
 逃げ込んだ先でも、落ち着くことなんてなかった。
 居場所を探すように男に抱かれ、その度に苦しくなった。

 中絶手術をした日。
 自分を傷つけてでしか居場所を得られないことに涙した。
 快楽を与えることでしか、安息を得られないことに。
 けれど、それですら仮初めでしかないことに、泣いた。

 街を離れ、仕事を始めた。
 部屋を借り、毎日遅くまで働き、決して男の誘いには乗らなかった。
 夜は眠る時間なのだと、何年か振りに思った。

 引越しをし、荷物が増え、職場でも信頼されるようになった。
 隣室の男と親しくなり、互いの部屋を行き来するようになった。
 初めて、自分から男を抱きたいと望んだ。
 けれど、それだけだった。
「結婚して欲しい」
 そう言われ、指輪を渡された。
 望んでいなかったこと。求めていなかったこと。
 得たいとも思わなかったこと。
 ボストンバッグひとつ分だけの荷物を持って、部屋を離れた。
 再び、夜に逃げ込む。

 数年が過ぎても、街の匂いは同じだった。
 汗と酒と煙草と香水と、命の匂い。
 カビと埃と小水と、反吐の匂い。
 声をかけてくる男の全てを無視して、毎日をただ眺めていた。

 気まぐれに付き合った男がいた。
「花火をしよう」
 そう言って、夜の海に連れ出してくれた。
 友人に借りたという車。運転は上手とは言えなかった。
 砂浜で花火をして、海を眺める。
 夜の海は恐ろしく暗く、黒く、深かった。
 眠りたいと、そう思った。
 男が波打ち際を指差す。
「夜光虫だ」
 燐光を放ち、舞い踊るように漂う夜光虫。
 その男とは、二度と逢うことはなかった。

 バッグを朝のごみ捨て場に投げ込む。
 昔、男に言われた言葉が頭に浮かぶ。
「お前は男を狂わせて、おかしくする」
 そうじゃないと思っていた。ずっと。
 おかしいのは、この世界の方なのだと。
 けれど――
 もしも、逆さまになったのなら?

 非常階段を、一歩ずつ上る。

 回っている体。
 頭が地面に、足が空に。
 今、やっと逆さまになれた。
 これで、世界と同じになれる。
 真っ直ぐになれる。
 微笑みが浮かび、
 衝撃と、
 暗転。


――――――ー

さて、こんな話を書き上げたとして誰が面白がるだろう?
面白がってもらって、俺は嬉しいだろうか?

でも書かないと進めない、不器用な俺。
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  1. 2006/08/24(木) 23:08:19|
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