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Junk Mind D.N.A.

ことばがかいてあります。

滲んだ景色

ぼやけた景色
曖昧な景色
焦点の合わない
涙で滲んだ景色


風の強い春の午後のことを思い出した。
車で坂道を登り切って、住む町を見下ろす。
舞い上がった埃を、日差しが白々と照らす。
滲んだ景色。曖昧な景色。隠された景色。

時間が過ぎるにつれて、思い出は薄くなる。
輪郭も、色も、匂いも、音も。
キモチすら薄くなる。
コーヒーに溶けたミルクは、もう白くはならない。
白くなりたいのに、混ざった色は隠せない。
混ざった色。不純な色。隠せない色。

変わらないことを願うよりも
変えられないものを望むよりも
変わり続けることを受け入れようと思っていた頃。
気がつけば、足元は真っ黒になっていた。
自分で吐き捨てた黒いキモチで、一色に塗り固められていた。
変わらないことを願えなかったこと。
変えられないものを得られなかったこと。
変わり続けた自分を、赦せなくなってしまったこと。
もう、変われないこと。

みかん色の街灯が、夜をほんの少し退けている。
僕の手は短いまま。
鈍い頭痛と、動かない手足と。
空虚さが広がる。空虚さに満たされる。
こんなキモチになったのは、いつ以来だろう。
酷く久し振りな気がして、少しだけ懐かしい。

嬉しくなんて、ないけれど。

誰かの言葉を思い出そうとしてみる。
誰かの背中を思い出そうとしてみる。
誰かの名前を思い出そうとしてみる。

それが誰だったのか、思い出せずにいる。

自分に同情しても、涙なんて出なかった。
悔しくて悔しくて泣くなんて、多分もう二度とない。
誰かの作った偽物の物語ですら、僕の心に届かない。
自分で描いた出来損ないの物語じゃあ、何も想えない。

泣きたくはない。
泣いてしまうことから、逃げられないとしても。
泣きたくはない。
泣いてしまえば楽になれることを、本当は知っているのだけれど。

移り行く季節が、輪郭を曖昧にしている。
僕らに穏やかさを思い出させようとしている。
平坦な日々と、穏やかな日々を同位にしようとしている。
誰が望んだのかは知らないけれど、クソ喰らえだ。

時計の針は止められる。
自分の時間は止められる。
止まった自分を取り巻く世界は、世界の都合で動き続ける。

何度ペンを手に取っても、ただ置くだけ。
白い紙には、意味のない図形が描かれるだけ。
そこから何かを読み取ろうとしてくれるような、そんな酔狂な人はいない。
自分ですら、握って捨てるくらいしかしたくない。
無駄を何度も繰り返して、僕らは大人になってゆく。

自分が何を望んでいるのかよりも、
自分が何を望まれているのか
そんなことばかりを考えて、夜が過ぎて朝になる。

優しい言葉なんて言えやしない。
優しくなんてなれっこない。
本当の優しさなんてしらないから、
今日もまた、ヤサシイ振りをする。

ビルに切り取られた空を、鴉が自由に舞う。

選んだつもりになっていたこと。
選ぶように仕向けられていたこと。
選ばせられたこと。
耐え切れなかったこと。
思い出して、苦しくなって、自分の弱さに反吐も出ない。

笑っていたこと。笑えたこと。
とても嬉しくて、自然で、楽しかったこと。
忘れられない記憶と、消えて欲しくないキモチ。

笑うしかなかったこと。笑うだけだったこと。
張り付いた笑顔に、感情が凍りついていたこと。
口元を隠して笑う癖が出来たこと。
心の中でだけ、中指を立てる日々。
クソ喰らえ。

歳を重ねるということ。
大人になるということ。
手足が伸びて、視点が高くなって、たくさんのものが見えて。
知って。経験して。やってきて。
でも、望むものには届かない手。
夢見た景色が見えない自分。

涙で滲んだ景色の向こうに
いつか夢見た景色があるなら

僕らはきっと
涙を浮かべて願った景色に
いつか辿り着く そのためだけに
両の足があり
ありのままに自分を見つめてくれる
たったひとりの誰かを抱きしめるためだけに
両の腕があり
哀しみでなく 喜びの涙を流すためだけに
両の瞳があり
辛い現実に 自分なりに立ち向かうために
あらゆる感情があり
心の奥底からの祈りを 大きく世界に吐き出すために
声があり
愛すべき人たちと分かり合うためだけに
言葉があり
生きてきた証を より強固なものとして受け止めるために
ちいさな それなりの 夢を持っている

永遠なんていらない。欲しいけど、いらない。
一緒にいられればそれで良い。足りないけど、大丈夫。
僕らはとても贅沢だけど、我慢しよう。
満たされていることから目を背けるのは、もう止めにしよう。

厳しい世界と決め付けるのを止めよう。
何かを自分に強制するのを止めよう。
思考を止めて誤魔化すのを止めよう。
傷の痛みにだけ気を取られるのを止めよう。
その場だけの自由に流されるのを止めよう。

安いプライドがあれば良い。
誰も傷つけないプライドがあれば良い。
他の誰にも理解されなくても、構わない。

景色が滲む。
記憶が薄れる。
言葉が遠くなる。
キモチが見えない。

辛いことを乗り越えるための、そんな約束。
満たされたことだけは、忘れないで。

今満たされていることから、逃げないで。

いつか必ず訪れる「明日」を、投げ捨てないで。


限りある時間なんて言っても
自分で限度を決めてちゃ、何も出来ない。
他の誰かに限度を決められてちゃ、意味がない。
限りあることをちゃんと理解して
目を開いて歩こう。

滲んだ景色も、いつかきっと
とてもクリアに見えるから。
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  1. 2007/02/12(月) 22:04:44|
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